クリニックの運営においては、「完全予約制として基本的に飛び込みの患者様を受け入れない」という経営スタイルをとることもできます。
ここでは、完全予約制でクリニックを経営することのメリットとデメリットについて解説していきます。

完全予約制には多くのメリットがある
完全予約制でクリニックを経営することには、多くのメリットがあります。
・人件費の節約になる
完全予約制にしておけば、スケジュール管理がしやすくなり、スタッフの仕事をスレンダー化することができます。その結果、無駄なくスタッフが動けるようになり、人件費の節約になります。
プラスでオンラインの予約システムなども導入することで、さらに効率良い運営が可能になるでしょう。
・リピーターの増加につながる
厚生労働省がとったデータでは、外来患者さんのうちの約半数近くが「待ち時間に不満がある」と感じていることが示されています。また、「満足している」と答えた人は4人に1人程度しかおらず、13ある項目のなかでもっとも不満を抱く人が多かったのがこの「待ち時間の長さ」の項目でした。
しかし完全予約制を敷くことで、この待ち時間を大幅に短縮できます。「待ち時間が短いこと」はリピーターの獲得に直結し、結果的に安定した運営をしやすくなります。
・感染リスクを低下させられる
新型コロナウイルス(COVID-19)の流行以降、多くの人は今まで以上に「病気への感染」に対して高い警戒心を持つようになりました。特に病気を患ってクリニックに足を運ぶ人は、新しいほかの病気にかかりたくないという気持ちが強いといえます。
そのような患者様に対して、「ほかの患者様と待合室で一緒になることなく、感染症にかかるリスクを下げられる」とアピールできる完全予約制は、大きなアドバンテージとなりえます。
・プライバシーに最大限配慮できる
病気や薬の話はプライバシー性の高いものですが、そのなかでも特に、「産婦人科」「AGAクリニック」「泌尿器科」「精神科」などは非常にデリケートな問題を扱うことになります。
産婦人科で不妊治療も行っている場合は「自分は不妊治療に通っているのに、子連れの人や妊婦さんを見るのはつらい」という人もいるでしょうし、AGAクリニックや泌尿器科に通う人は「ほかの人と比べたくない、ほかの人と顔を合わせたくない」と考える人も多いことでしょう。精神科の場合は、そもそも人が多くいるところに足を運ぶことがストレスになる人もいます。
しかし完全予約制にすれば、このような「他者と顔を合わせることによる精神的負担」を軽減することができます。その結果、通いやすいと評価され、リピーターの獲得に繋がることが予想されます。
完全予約制にもデメリットはある

メリットの多い完全予約制ですが、デメリットもあります。
・地域に根付きづらい側面も持つ
完全予約制はその性質上、飛び込みの患者様を基本的には受け付けないことになります。そのため、潜在的な患者様となりうる人のなかでも、「あそこは本当につらいときでも、予約がなければ診てくれないから」という印象を抱く人も出てきます。
これは新規の患者様を獲得したいと考えるクリニックにとって、しばしばデメリットとなり得ます。
・ドタキャンが収益減少に直結する
患者様の都合でドタキャンが発生したときのダメージが大きいのも、完全予約制のデメリットです。
完全予約制の場合、その枠をその患者様のためだけに確保する都合上、その患者様がキャンセルされても、ほかの人を入れることができません。そのため、いわゆる「ドタキャン」が収益減少に直結します。
そのため、「2回続けてキャンセルした場合は、予約をお断りする」などの姿勢を打ち出すクリニックも見られますが、この場合は大雪などの自然災害にどう対応するべきかの過大が残ります。
完全予約制には、メリットもあればデメリットもあります。また、完全予約制が向く科もあれば、完全予約制をとらない方が柔軟に運営できる科もあります。
自院のスタンスや科を考慮したうえで、どちらにするか考えていくとよいでしょう。
私たちメディカルコンサルティングでは、「完全予約制にするべきか、せざるべきか」などの相談に対して、貴院の特徴を踏まえながら、アドバイスを行っています。