起業・自営業を行うときに、よく話題に上るのが「家族経営は、可か非か?」という問題です。これはクリニックの経営であっても例外ではありません。
ここでは、「開業医と、家族経営」をテーマに、そのメリットデメリットについて解説していきます。
家族経営のメリットについて
家族経営を行うことのメリットは、いくつかあります。
1.税制面の優遇措置
家族経営は、税金面での優遇措置が大きいというメリットがあります。たとえば、「父親が医師かつ経営者であり、母親がその事業に専心している」という場合、母親は専従者控除制度を利用できます。専従者控除制度とは、「15歳以上の家族(や親族)を、年の半分以上にわたって雇い続ける場合、その対象者に給料を支払える」という制度です。払った給料は経費計上ができるため、節税が行えます。
2.人員不足の解消
医師ひとりでクリニックを運営していくことは極めて難しいため、スタッフを雇うことになります。しかしこの「スタッフの確保」は、なかなか難しいものです。
しかし家族経営ならば、このような人材不足に悩まされることもありません。また、基本的には急に仕事を辞められることもないため、安定的なクリニック経営が行えます。
3.密に連絡を取り合える
「スタッフにはなかなか本音を言えない」「意見がぶつかったら退職されるかもしれない」「夜勤の救急対応をお願いできない」というケースは、決して少なくはありません。
しかし気心の知れた家族がスタッフであるのなら、このような点もクリアできます。家族の間で話し合いができるため、緊急時の対応も行いやすいというメリットがあります。
4.将来のことを見据えた教育もできる
「母親が開業医であり、息子も医師免許を取得している。お互いの間で、母親が引退した後は息子が引き継ぐことになっている」という場合、親子でクリニックを運営していくことには大きなメリットがあります。
個人のクリニックは、立地の良さ・医師の人柄や腕への信頼を理由として、そこに通っている患者様が多く見られます。このような患者様に対して、早い時期に母親の「後継者」を紹介して置くことで、患者様離れが起きにくくなるのです。
また、経営のノウハウなどを直接伝えることもできます。
家族経営にはデメリットもある
このように多くのメリットを持つ「クリニックの家族経営」ですが、当然そこにはデメリットもあります。
1.感情による甘えが出る
上記で「家族ならば緊急時の対応などもしやすい」としましたが、これは逆に、「感情面による甘えが出ることである」ともいえます。
本来ならば時間外の時間帯を対応させることに抵抗感がなくなったり、金銭面でルーズになってしまったりする可能性もあるということです。
そして一度このような感情の軋轢が生じた場合、家族経営であるがゆえに、「職場を離れる」ということができず、関係性が余計に悪化するケースもあります。
2.共倒れになることもある
「医師である妻が開業医となり、会社員である夫はそのまま外で働き続ける」というかたちは、「共倒れのリスクを最小限に抑える方法である」といえます。
たとえば家族経営で全員がクリニックの運営・経営に集中していた場合、クリニックの資金繰りが悪化して倒産することになれば、ほかの家族もまた職を失うことになります。結果として生活自体が立ち行かなくなってしまうこともあるでしょう。
しかし、「別々の職場で、別々の収入源を持つこと」は、このようなリスクを避ける対策となりえます。
3.スタッフからの不満が出ることも
「家族であっても、ほかのスタッフと同じように公平に接する」といったスタイルを徹底できればよいのですが、しばしば「家族だから甘やかしてしまう」「無理を聞いてしまう」という状況にあるクリニックも見受けられます。また、家族のなれなれしさを職場に持ち込むことで、ほかのスタッフが拒否感を抱くこともよくあります。
そしてこのような不満や拒否感は、スタッフの退職を招きます。
家族経営には、メリットもあればデメリットもあります。
両方を踏まえたうえで、「自院はどうするべきか」を考えていく必要があるでしょう。
株式会社メディカルコンサルティングでは、様々なクリニック経営に関するご相談をお引き受けしていますのでお気軽にご相談ください。