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開業の資金計画~「無理に返済をしない」という選択肢

クリニック・病院の開業には多額のお金がかかります。そのため、多くの人が「開業資金を借りる」という選択肢を選んで、開業に至ります。では、この「開業時にした借金」はいつを目安に返済すればよいのでしょうか。

開業資金を借り入れる人は、全体の85パーセントを超える

開業資金を借り入れる人は、全体の85パーセントを超える

少し古いデータではありますが、日本医師会が2009年に出したデータのなかで、「新規開業をしてから5年以内のクリニックのうち、借入金があるクリニック・病院は85.8パーセントである」と報告されています。つまり、全体のほとんどが借金をしたうえで開業に至っているのです。

ただしこの数字は、開業してからの年月が長くなれば長くなるほど少なくなっていきます。たとえば開業5~10年経ったころには、借入金を返済しきっている層が3分の1以上を占めるようになりますし、20年~30年では全体の60パーセントが返済を完了しています。30年を超えるころには、全体の76.8パーセント程度が「借入金なし」となり、5年以内のときの比率とほぼ逆転します。

なお、開業医の場合、開業にあたって発生した借入金は、「個人保証」というかたちにしていることが非常に多いといえます。10人中9人はこのスタイルをとっていると、同報告でまとめられています。

病院の開業にかかる費用は、「どの科にするか」によって大きく異なります。たとえば医療機器をそれほど必要としない精神科の場合は非常に安く抑えられますが、整形外科や内科などの場合は費用がかさみがちです。また、開業にあたっては、当然のことながら、医療機器以外の費用も必要になります。このようなことを考えれば、クリニック・病院の開業は「借金が前提になるもの」だと考えた方がよいでしょう。

出典: 社団法人日本医師会「開業動機と開業医(開設者)の実情に関するアンケート調査」
https://www.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20090930_21.pdf

「早期に返済する」が唯一絶対の正解ではない

「早期に返済する」が唯一絶対の正解ではない

一部の特異なかたち(親から無利子で借りるなど)でもない限り、借金には「利子」が発生します。すでに述べた通り、クリニック・病院の開業には多額の資金がかかるため、この「利子」も大きくなりがちです。このようなことから、「早く返してしまいたい」と思う人も多いことでしょう。

しかし、「早期の返済」は唯一絶対の正解ではありません。 返済を急ぎすぎてしまうことで、手元に現金が残りにくくなります。個人で経営する場合、「先月は多くの患者様が見えたが、今月は少なかった」などのようなことが起こりがちです。

このような状況にあって、「繰り上げ返済を急いだあまりに、手元に現金が少なくなっていしまっていた」ということになれば、経営はたやすくショートします。場合によっては、スタッフの賞与の支払いに影響が出てしまうことすらあります。無駄を極力省こうとするあまり、光熱費などの「患者様にも影響がある部分」を抑えようとして、患者様の「通いやすさ」を阻害してしまう可能性も高くなるでしょう。

経営をしていくうえで重要なのは、中長期的な視点です。クリニック・病院経営においては、十分な現金を手元にプールしておくことが、予想外の経営危機を乗り切るためのキーとなります。もちろん「十分に現金があり、そのうえでまだ余剰金がある」という場合は繰り上げ返済に踏み切っても構いませんが、その判断は慎重にするべきでしょう。

もっともこのような経営判断を、医師が一人で行っていくのは非常に大変なものです。「医療の面では自信はあるが、経営面では不安がある」という人も多いことでしょう。そのような場合は、私たち株式会社メディカルコンサルティングにご相談ください。たしかな知識と経験に基づき、クリニック・病院の開業・運営支援を行います。